クリスタル・パレス・パークで恐竜に会おう

クリスタル・パレス(Crystal Palace、水晶宮)とは、1851年のロンドン万国博覧会のべニューとして建築された、ガラスと鉄でできた建物。これを設計したジョセフ・パクストン(Joseph Paxton)は、もともとは、造園家であったため、巨大温室の風体の建物でした。クリスタル・パレス建設に、使用された鉄は4000トン、ガラスは400トンというので、そのスケールの大きさがわかるでしょうか。

ロンドン万博期間中は、ハイドパークへ設置されていた水晶宮ですが、万博後、テムズ川南のシドナム(Sydenham)の地へ移動され、拡大され、内部に仕切りが作られます。建物は、コンサート、劇場、展示会等の各種イベントに使われ、また、周辺の地には、公園及び、スポーツ施設が作られます。もともと鉄道の走っていた場所だった事も手伝い、足の便が良く、前回のアレクサンドラ・パレスに関する記事に書いたよう、ロンドン市民の間で人気の場所となります。定期的に行われた花火でも有名だったようです。

ところが、約80年後の1936年11月、クリスタル・パレスは火事で消失してしまうのです!高台に建っていたため、その焼け落ちる様子が、かなり遠くからでも見れたのだとか。そのため、現在、この地に、ヴィクトリア朝の名残として残るのは、クリスタル・パレスの土台の廃墟と、公園(Crystal Palace Park、クリスタル・パレス・パーク)内に、1856年に作られた恐竜達のみ。

恐竜の置いてある公園などは、最近では良く目にするもので、私の住んでいた日本の団地内にも、上に登れる恐竜が何個か置いてああり、良く遊びましたが、クリスタル・パレス・パークの恐竜達が一味違うのは、何と言ってもその古さ。そして、その製作と設置には、ロンドン自然史博物館の設立にも一役買い、Dinosaur(ダイナソー、恐竜)という言葉を作った生物学者リチャード・オーウェン(Richard Owen)も携わったのですから、まさに、元祖恐竜公園なのです。池の周りに点在する恐竜達に、触ったり登ったりはできませんが、周りに生えている植物なども手伝い、ジュラシック・パークっぽい雰囲気はかなりでています。

ただし、当時はまだ、化石の発掘なども勢いがついてきたばかりで、その数も少なく、発見された骨や化石から、実際にどんな形をした生き物だったのかを判断するのは、至難の業であったようで、ここでご対面する恐竜たちは、多少の間違いを含んでいます。それがまた、まだ、比較的新しい部門の学問の発展過程を垣間見れて、逆に面白くもあるのです。

たとえば、クリスタル・パレス・パークのイグアノドン(Iguanodon)。鼻の上に角が生えていますが、これは、イグアノドンの巨大な角の様な親指が、当時、何なのか、わからなかったため、サイのような角として摸されてしまった!

上のメガロサウルス(Megalosaurus)は、一番最初に命名された恐竜だという事ですが、こちらは、現在では、小さな前足を持ち、2本足で歩く恐竜であると判明しているものです。

このガメラの様な恐竜は、ディキノドン(Dicynodon)。現在では、ディキノドンには、亀のような甲羅は無かったとわかっています。ガメラはいたけど、さすがに、ザ・ピーナッツを背中に乗せた、モスラのような恐竜の模型はなかったですね。モスラ風のものが実際に大昔、存在したとしても、骨が無いから、化石は残っていないでしょうし・・・。

恐竜達を後に、クリスタル・パレス・パークの他の部分を散策すると・・・

第一次世界大戦を記念した鐘も、花に囲まれて。シルエットが綺麗です。

また公園内にあった情報掲示板によると、クリスタル・パレス・パークは、ガール・スカウト設立ゆかりの地でもあるということ。1909年に、ボーイ・スカウトの会合がこの公園であった際、数人の女の子がボーイ・スカウト創始者のロバート・ベーデン=パウウェル(Robert Baden Powell)に近づき、女の子のための、似た様なグループを作って欲しいと要求。ベーデン=パウウェル氏は、さっそく、ガール・スカウトの成立を計画し、翌年の1910年には、すでに開始。すばやいですね。設立当時には、6000人の女の子が参加したそうです。

遠くからも目に付くテレビ塔を目標に更に公園内を進むと、

クリスタル・パレスのあった跡地です。消失してから、かなりの月日がたっているのに、まだ本当に「あ・と・ち」という感じで、他には何もありません。

ほれ、ごらんの通り、あ・と・ち・・・ですよね。

エジプトのスフィンクスのようなものもいくつかありました。この丘の上からの眺めは、なかなかで、ベンチに座ってしばらく、ほーっとしました。

一時は、クリスタル・パレス・パーク内に、巨大映画館を建設する計画などもたったそうですが、これは住民の大反対で流れ、以後の開発はこの地の歴史的価値を考慮したものにする、という事です。水晶宮の再建なども、いつの日にか実現するでしょうか。巨額がかかる事でしょう。

今のところは、「クリスタル・パレス・パーク」というと、古い恐竜達に会える所。モーリス・センダックの有名な絵本の題名のごとく、「Where the Wild Things Are」(かいじゅうたちのいるところ)ってな感じです。それだけでも、私には、魅力満点の場所であります。バイバイ、恐竜。また来るね。

尚、最寄り駅クリスタル・パレス駅(Crystal Palace Station)は、公園より徒歩3分くらいです。

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