マロニエの花咲く頃

イギリスでは、ホース・チェスナッツ(Horse Chestnut)の木が花盛りです。

ホース・チェスナッツは、日本語でセイヨウトチノキ・・・また、フランスでの名から、マロニエと称される木。イギリスには16世紀にバルカン半島から導入されたと言われますが、今ではすっかり現地化し、イギリスの風景に溶け込んで、その花は5月の、その実は9,10月の風物詩となっています。

何故、マロニエが、イギリスでホース・チェスナッツ(馬の栗)と呼ばれるかには、いくつか説があるようで、手持ちの1冊の本には、ホースは馬とは全く関係なく、粗悪なを意味するコース(coarse)から来ており、栗の実(チェスナッツ)よりも粗悪な実をつける事からきた名であるとありました。が、別の本には、16世紀に、ヨーロッパ人が、トルコ人がこの実を病気の馬に与えているのを目撃した事に由来する、などとありました。コンカーと呼ばれる、つやつやした茶色のマロニエの実は、生で食べると、多少毒性があるのだそうで、リスなども手をつけません。ですから、馬にあげていた、というのは、ちょっと嘘っぽい感じです。水に浸してから調理したものは、家畜のえさにできるとは言いますが。また、葉が落ちた後、枝に残るマークが、馬の蹄鉄のようなので、こういう名が付いた、という話も聞いたことがあります。

一般的な白い花のマロニエの学名は、Aesculus hippocastanum。「 hippocastanum」は、そのままホース・チェスナッツの意味。 ラテン語で、「hippos」は、馬を指すのだそうで、ヒポ(hippo)で始まる言葉は、馬関係。そういえば、 ローマ時代のヒポドローム(hippodrome)は、馬に引かれチャリオットを走らせる競技場の事でしたし、英語で「かば」は、 ヒポポタマス( hippopotamus)、「川の馬」の意味を持ちます。

4月初旬に噴出す葉は、大きな手のひらの形をしており、判定が比較的簡単な木のひとつでもあります。特に、5月に、このキャンドルのような上向きに付く房に花が咲き出すと、すぐマロニエとわかります。この花の形から、キャンドル・ツリーとも呼ばれることあり。

マロニエは、光を必要とする木であるため、森林内よりも、公園、道端、街路などでお目にかかる事の多い木でもあります。比較的、育ちが早い木で、白くやわらかい木は、材木としての価値はあまりなく、使用するとすると、室内用のウッド・カービングが主だそうです。

秋には、一番最初に、葉の色が変わり始める木のひとつ。上の写真は、秋のマロニエ並木。緑色のぼこぼこした形のからに守られた実(conkerコンカー)が実りますが、これが、頭上からぼこーんと落ちてきて、頭に軽症をおった人などの話も聞いたことがあります。

コンカーは、子供たちが集めて、実の真ん中に穴を開け、太目の糸を通し、これもまた、コンカーと呼ばれるゲームに興じる事も。昔は、コンカラーと呼ばれ、かたつむりの殻、そしてヘイゼルナッツを使用していたゲームですが、やがて、マロニエの実で代用されるようになったのだそうです。だんなの子供時代にも、秋に盛んにやったようです。競技者は、それぞれの糸の通ったコンカーを使って相手のコンカーに叩きつけて、相手のコンカーが割れると勝ち・・・という単純なもの。

安全第一の現代社会では、生徒が、コンカーが目にあったって怪我をせぬよう、ゴーグルを使用せずにコンカーで遊ぶ事を禁止した学校のニュースなども流れていました。学校側も、生徒が怪我をすると、すぐに訴えてくる親がいることから、細心の注意と言うところでしょうが、ゴーグルをかけての野外での遊び・・・ちょっと、やりすぎか。

普通のマロニエとは、多少違う種の、レッド・ホースチェスナッツと呼ばれる、赤い花のものもあります。これは、普通のマロニエ(Aesculus hippocastanum)と別種の木との合いの子で、学名はAesculus x carnea。このレッド・ホースチェスナッツの木はやや小さ目。でも、花満開の様子は、それは華やかです。

うちの町の目抜き通りでも見事な花を咲かせていて、ここを通るたびに、しばらく立ち止まって眺めるのです。

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