エリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリー

前回の投稿から1ヶ月経ってしまっていました。気がつくと、来たる週末は、英国女王、エリザベス2世のダイヤモンド・ジュビリーの記念行事が催される、ジュビリー・ウィークエンド。土日に続き、月曜日、火曜日も、休日となります。

「ジュビリー(Jubilee)とは、なんじゃいな」という人のため、ジュビリーという言葉の意味を、手持ちの辞書で見てみると、

a time, season or circumstance of great joy and festivity; the celebration of a 50th or 25th anniversary, eg of a king's accession; a year (every 25 year, ordinary jubilee) of indulgence for pilgrims and others, an extraordinary jubilee being specially appointed by the Pope (RC); every 50 year, a year of release of slaves, cancelling of debts, and return of property to its former owners (Jewish hist).

大きな喜びや祝い事の時、季節、機会;25周年または50周年の記念(例えば、王の戴冠記念等);巡礼者その他への免罪の年である聖年(通常の聖年は25年ごと)、ローマ法王によって指定される特別な聖年もある(ローマ・カソリック);50年毎、奴隷の解放、負債の帳消し、そして土地を以前の所有者に返還する年(ユダヤの歴史)

とあります。

そして、その後に、silver, golden and diamond jubilee(シルバー、ゴールデン、ダイヤモンド・ジュビリー)という項目があり、それによると、

respectively a 25th, 50th and 60th anniversary

それぞれ、25周年、50周年、60周年の記念

と書かれています。もとは旧約聖書などに遡る宗教的意味もある言葉。「今年は、debt jubilee(借金のジュビリー)として、ぼろぼろ財政のギリシャの借金を帳消しにしたらどうか」などというような使われ方もします。

今回、イギリス及びイギリス連邦の国々で祝われるダイヤモンド・ジュビリーは、借金やローマ法王とは関係なく、エリザベス女王在位60周年の祝祭であります。

過去のイギリスの王、女王のうち、ダイヤモンド・ジュビリーを迎え、祝ったのは、ヴィクトリア女王のみ。ただし、ヴィクトリア女王は、夫君、アルバート公亡き後、しばらく喪に服していたため、25周年のシルバー・ジュビリーのお祝いをしなかったのだそうで、シルバー、ゴールデン、ダイヤモンドの全てのジュビリーを祝うのは、エリザベス2世が初めてという話です。

エリザベス女王が、父王亡き後、エリザベス2世として女王となったのは、1952年2月6日、ウェストミンスター寺院における戴冠式はその約1年後の、1953年の6月2日。この戴冠式のためにテレビを買った人なども多かったようで、戴冠式のテレビ放送は、この国で初めて、ラジオよりもテレビ視聴者のほうが数を上回ったイベントでもあったと言います。それでも、まだ、テレビは、1家に1台というわけではなかったでしょうから、テレビのある親戚知り合い宅を訪れて、皆で戴冠式を見る・・・という和気藹々イベントでもあったでしょう。

ちなみに、ロンドンの地下鉄の路線のひとつにジュビリー・ライン(ジュビリー線)というのがありますが、これは、エリザベス女王在位25周年のシルバー・ジュビリーの年(1977年)に、以前はフリート・ラインと呼ばれていた地下鉄路線が、改名されたもの。ロンドン地下鉄の地図は、路線により違う色で表されていますが、フリート・ラインを表示していた濃い灰色を、シルバー・ジュビリーでの改名に伴い、色をシルバー(銀色)に近くなるよう、薄くしたという事です。ですから、ジュビリー・ラインの路線の色は灰色ではなく、正式には銀色なんですね~。

そしてまた、この1977年のシルバー・ジュビリーの年というと、パンク・ロック・バンドのセックス・ピストルズ(Sex Pistols)が、この国に未来はない・・・と歌った、「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」(God Save the Queen)が、女王の目と口をふさいだ、当レコードジャケットデザインと共に、思い起こされます。(上記写真は、チャネル4のサイトの、この曲が再リリースされるというニュース記事から拝借しました。リンクはこちらまで。)

70年代後半のイギリスの、怒れる労働階級若者グループによるこの曲の歌詞は、


God save the Queen
the fascist regime,
they made you a moron
a potential H-bomb.

God save the Queen
she ain't no human being.
There is no future
in England's dreaming

Don't be told what you want
Don't be told what you need.
There's no future
there's no future
there's no future for you

神よ女王を守りたまえ
ファシストの体制
奴らはお前を阿呆にするぞ
潜在的な原爆だ

神よ女王を守りたまえ
女王は人間じゃない
イングランドが夢見たところで
未来なんか無い

何が欲しいか、指図されるな
何が必要か、指図されるな
未来なんか無い
未来なんか無い
お前には、未来なんか無いんだから

社会の底辺で、生活にあえいで、明日の我が身がどうなっているかわからぬ国民がいる中で、特権階級に生まれた人間のために、何故に、有り難がって、旗振らねばならんのかね・・・という感じか。今回のダイヤモンド・ジュビリーのお祝いも、このシルバー・ジュビリーの時と同じく、経済危機、生活水準の悪化、国費節約の中、国民の焦点を政治からずらして、おめでた気分でごまかそうとしているんじゃ、というシニカルな見方も出てきます。

その一方で、世界のあちこちで、イギリス王室が好きで、イギリス国民でもないのに、ユニオンジャックの入ったグッズを買ってしまう・・・なんて人も多いし、母国に王室や皇室がある国の国民でも、英王室の噂話の方に、もっと興味があるし、良く知っているなんていう人もいる。「ゴッド・セーヴ・ザ・クイーン」の2番の歌詞にも、


God save the Queen
'cos tourists are money


神よ、女王を守りたまえ
だって、観光客は金になるから

とあります。

そういう意味では、女王と王室はイギリスにはとって、イメージアピール、観光促進のための、貴重なマーチャンダイズであるのです。これは、去年、世界のメディアを大忙しさせた、ウィリアム王子の結婚式の時にも思ったのですけどね。

ただ、昨今、若者層に失業者が増える中、うちのだんななどは、ダイヤモンド・ジュビリーも達成した事だし、女王が率先して、若い世代にバトンタッチする意味で、そろそろ引退し、チャールズ皇太子に王座を譲ってもいいんじゃないか、などと意見しています。確かに、女王の母親、クイーン・マザーが非常に長生きだったので、エリザベス女王も、100歳以上まで引退せず、王座についていたままだと、チャールズ皇太子が王になる頃は、もう彼、よぼよぼ、よろよろの可能性が・・・。

色々、ダイヤモンド・ジュビリーの記念商品が出る中、我家は、ダイヤモンド・ジュビリー用期間限定マーマイトを購入しました。

マーマイトの通常のスペルは、Marmite ですが、このジュビリー版は、Ma'amiteとスペルされています。女王陛下を呼ぶときに、この「Ma'am」を使うので、それをもじって綴ったもので、なかなか、気が利いてます。ついでながら、この「Ma'am」という女王陛下への呼称は、発音する時、マームとのばさずに、ハムと同じように短く、マムと発音されますので、いつか、何かの機会で、女王からの招待で、バッキンガム宮殿に招かれた際には、きちんと、「マム」とお呼びしましょう。このマーマイトも、ママイトと呼んだほうが正解か。ラベルの下の方には、Toasting the queen's diamond jubilee 「女王のダイヤモンド・ジュビリーを祝って(乾杯して)」と書かれていますが、この「toast」という言葉も、マーマイトをべたっと塗って食べるトーストの意味もあれば、「杯を上げて祝う」という意味もあり、これも一種の言葉遊び。

さらに瓶の裏ラベルには、「女王は、マーマイトと同じよう長い間君臨しているけれども、マーマイトの歴史にはまだちょっと足りない・・・」のようなくだりが書かれており、調べてみると、確かに、マーマイトは、イギリスで、1902年に商品化されています。ヴィクトリア女王が亡くなった1年後、エドワード7世の時代初期がデヴューですから、これは、マーマイト、威張りたくなるかも。

このジャーは、中身を使い終わっても、取っておきましょう。期間限定とは言え、相当の数が売り出されているはずなので、将来、貴重品になることはまずないでしょうが、「あ、これは、ダイヤモンド・ジュビリー・イヤーに買ったマーマイトの瓶だ」と懐かしく手に取る事もあるでしょう。

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今週末のジュビリー・ウィークエンドの簡単なスケジュール

6月2日の土曜日は、競馬好きの女王陛下、エプソム・ダービーを観戦。

6月3日の日曜日の午後は、テムズ川で、1000以上の船が集まり、女王と夫君エディンバラ公らは、王家の船でどんぶらこっこと川下り。

6月4日の月曜日、夜は、50周年のゴールデン・ジュビリー同様、バッキンガム宮殿でのロック・コンサートが開催されます。2002年に行われた、在位50周年のゴールデン・ジュビリー・コンサートの際は、ロック・バンド、クイーンのブライアン・メイが、バッキンガム宮殿の屋根で、ピストルズの歌ではなく、国歌の方の「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」のギター演奏をしたのが記憶に新しいところです。(10年前の事を、記憶に新しい・・・などと思うようでは、私も、もう年かもしれません。)今回は、マッドネスが「アワ・ハウス」を宮殿屋根で演奏するという話ですが。

6月5日の火曜日の午前は、セント・ポール寺院での礼拝。ロンドン内での、諸々のパレード、式典。午後は、バッキンガム宮殿のバルコニーにお目見えしてクライマックス。

また、この期間中、イギリス各地でストリート・パーティーなど開かれる予定。

毎日の様に雨で、記録的な雨量となった4月をあとに天気はぶり返し、5月後半からは好天が続いていますが、さて週末はどうなりますか。

ダイヤモンド・ジュビリー公式サイトはこちら。上で使用した、女王戴冠式の写真は、このサイトから拝借しました。

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